京都いろいろ裏通り

京都の大路小路のあれこれをお届けします。

足許の京都⑭ 静かな時

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夜の産寧坂を歩きたかった。日中は足許やみやげ物屋のに気を取られ、高い声で交わされる会話に惑わされる。後ろから押されるように、上があるから上る坂。惰性で往来する石段。

夜の帳が黒々と下りるとき、坂の街並みは息を吹き返す。しもた屋は雨戸を閉ざししずまりかえり素顔を取り戻す。ひとつふたつの街灯をたよりに歩く一歩また一歩。鉄の板のように凍てついた石畳。雨濡れの光に冷気を宿す。行く人が来し方を振り返る夜。