京都いろいろ裏通り

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近江・五個荘の金堂に行ってきました

 

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五個荘金堂の町並み

 

6月20日(土)東近江の五個荘金堂を訪れた。今回が二度めだ。去年の夏にも来ているが、そのときは発作的に始めた中山道を東京まで歩くツアーの途中に立ち寄ったのだった(中山道歩きはこの3月に馬籠宿までいったところでコロナ禍の自粛でストップしたままだ)。

 五個荘には一度は行ってみたい土地だった。もちろん司馬遼太郎が「街道をゆく」の中でこの村のことを書いているのは知っていた。商人の町だから積み上がった財で競い合って豪邸を建てたというようなことがこの集落では起こらなかった。

 「成金趣味がかけらもなく。どれもが数寄屋普請の正統をいちぶもはずさず、しかもそれぞれ好ましい個性があった」「互いに他に対してひかえ目で、しかも微妙に瀟洒な建物を建てるというあたり、施主・大工をふくめた近江という地の文化の土壌の深さに感じ入ったのある」 司馬遼太郎はそんなふうに評している。

 たしかにそうだ。長大な板塀、なまこ壁に舟板塀、土蔵、数寄屋造りの屋敷、見越しの松、めぐらされた水路。フォトジェニックな、和風の粋を集めたような佇まいがこの集落にはある。外国人が好きさそうな景観でいっぱいだ。「和」というテイストで集落は完全に囲われているのでテレビや映画のロケでしばしば使われている。観光客はほとんどいなかったが人気俳優が出演する映画などがもしこの地でロケでもしたら人がどっと来るであろう。

 

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五個荘金堂の町並み

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なまこ壁

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舟板塀 琵琶湖漁で傷んだ舟の板をはがして打ったもの 「しまつ」という生活の知恵のひとつ


 今日この地を訪れたのは文芸誌仲間で刀剣作家の北川正忠さんの作品展が町の東近江市近江商人博物館で開かれているのを見に行ったのだ。北川さんは今般、現代刀職展の最高峰・高松宮記念賞を受賞されたのだった。展示場ではビデオが流されており北川さん刀鍛冶の工程の一部が紹介されていた。そこで一つ発見があった。刃文だ。刃文は刃につけられた模様だがこれって槌でうちながら描き出すものだと思っていたが、焼刃土(粘土、炭粉、砥石粉を混ぜたもの)を厚く塗ったり薄くしたりして、焼入れたとき熱伝導の操作によって浮かび上がらせるものなのだ。北川さんの好みは丁子乱れという文様らしい。妖しいまでの光を放っている。

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北川正忠さんの作品

近江商人をルーツにもつ企業はあまたある。伊藤忠商事、丸紅、ワコール、 日本生命東洋紡、小泉産業などなど錚々たる看板である。これらがすべて五個荘の出ではないけれどなにがしか事業を起こし継続していく上での精神的な土壌が近江の地にあるのかもしれない。「三方よし」とは「売り手によし、買い手によし、世間に1よし」の気風が商いを生業とする人々の血管に継承されてきているからかもしれない。

 外村繁は木綿問屋外村家の三男としてこの地に生まれた。「草筏」で第一回芥川賞候補となりその後読売文学賞なども受賞した。

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外村繁邸 

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外村繁邸 広間 NHK「べっぴんさん」のロケ場所

 この畳はそんじょそこらの畳ではない。150年まえの畳が今なお残っている。足裏のふわふわ感はたまらない。中継ぎ表といわれる特殊な編み方でつくられたものだそうです。

 

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郵便ポストも風景にとけこんでいるような。

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稲の青がみずみずしい