京都いろいろ裏通り

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日本史のツボ

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 昨日までに読み終えた本が日本中世史が専門の東京大学教授の本郷和人氏が書いた「日本史のツボ」(文春新書)。これまでの山川本に代表される通史や時代を絞った時代史やテーマを絞った各論史(最近では「応仁の乱」が大ブレイク)や京都本に代表される地域史などがあるが、今回のこれ、テーマを絞って古代から江戸期ぐらいを通しで考えている。

天皇、宗教、土地、軍事、地域、女性、経済の七つにテーマを絞って古代から平城京平安京の頃から鎌倉、室町、戦国、江戸の各時代を輪切りにし本質を炙り出そうという試みである。知らなかったなあ、という事実やそうだったかと嘆息する解釈もあってなかなか楽しめた。

全部をここで披瀝する紙面はないのだが、例えば第一章「天皇を知れば日本史がわかる」では、天皇家の由緒と特長についていくつかの小論を設けている。天皇家はもともと大和の地で勢力を伸ばした豪族のひとつが力をつけて他を武力でねじ伏せ君臨してきた一族であった。

645年の天智天皇が実権を握った大化の改新乙巳の変645年)やその弟大海人皇子が天智の子大友皇子に勝利した壬申の乱(670年)、時代は下がって天皇家が武士政権から権力を奪還しようとした承久の乱(1221年)、建武の新政(1333年)で権力を天皇家に奪還した後醍醐天皇がいた。天皇という王家に実質的な統治権力が戻ってくるのは明治維新まで待たなくてはならなかった。

今の天皇家は国民の象徴。天皇皇后両陛下が阪神淡路大震災や東北大地震で被災者を穏やかな表情で見舞う様子や、平和の希求者として沖縄やアジア諸国を歴訪する真摯な姿はどれも印象深い。

だが天皇家もとは血で血を争う武力闘争によって権力基盤を整えて来た集団であったことをこの書で改めて知った。